CS Street

2000/12/03 @528(20:40)

 

20世紀に登場し人々のライフスタイルを大きく変えたテレビジョン。
このテレビが来たる21世紀に新たな変革を遂げようとしています。
それは、「デジタル革命」。

国内における本格的な衛星放送は、1980年代後半よりNHKとWOWOWによって始まりました。
当初は地上波放送と同様アナログ放送だった衛星放送ですが、1990年代後半に「デジタル革命」が押し寄せます。
デジタルによる多チャンネル戦争、「スカパー」ことスカイパーフェクTV!というCSデジタル放送です。
私もデジタルの波に乗らんとばかり、スカパーに加入しました。

そして2000年。デジタル革命はついにBS放送にまで波及しました。
現在は衛星放送でしか実現していませんが、やがては日本国内における全ての放送がデジタル化されます。

ここではBSデジタル/CSデジタル放送について解説します。

 

そもそもBSとCSって何?

BS(Broadcasting Satellite)は「放送衛星」、
CS(Communications Satellite)は「通信衛星」のことです。

どちらも人工衛星であることには変わりありませんが、BSが日本国内向けの放送を目的としているのに対し、CSは通信を目的としており、その中に放送(国外への放送も可能)を含めています。

衛星放送の魅力は、その対象地域の広さです。
地上波放送とは異なり、日本国内のほとんどをカバーすることが出来ます。

現在、BS放送ではNHKやWOWOWを始めとした各社によるアナログ放送および2000年12月1日11時より本放送の開始したデジタル放送、CS放送ではミュージックバードによるアナログ放送およびスカイパーフェクト・コミュニケーションズ(スカパー)によるデジタル放送が行われています。

近い将来、日本国内の全ての放送がアナログからデジタルへ移行するのは確実で、BS放送やCS放送はその牽引役としてデジタル化のイニシアティブを取っています。

まずは衛星から知ろう。

ではBS/CSにはどのような種類があるのでしょうか。

BS/CSの種類

まずはCSから。

東経154度のJCSAT-2では、「ミュージックバード」によるPCM音声アナログCS放送が行われています。

東経128度のJCSAT-3ならびに東経124度のJCSAT-4Aでは、「SKY PerfecTV!(スカパー)」によるデジタルCS放送が行われています。
具体的にはJCSAT-3では「パーフェクTV!サービス」による、またJCSAT-4Aでは「SKYサービス」による放送が行われています。
これはもともと「スカパー」が「パーフェクTV!」と「JskyB」の合併で生まれた経緯によるものです。
2つのCSは比較的経度が近いため、同じアンテナで受信することができます。

東経144度のSUPERBIRD-Cでは、以前「DIRECTV」によるデジタルCS放送が行われていましたが、スカパーへ事業統合により、現在放送は行われていません。

東経110度のN-SAT-110(110度CS)では、2001年夏以降からスカパーとNTT東日本による企業連合と、日本テレビとWOWOWによる企業連合による新CSデジタル放送が行われる予定です。
このN-SAT-110は、2000年10月7日にJSATと宇宙通信が共同で打ち上げたCSで、BSで使われる東経110度に経度を合わせることでBSとCSの共用化を見込めるため打ち上げられました(2000年までに打上げないと、日本はこの軌道位置のCS打ち上げの権利が消えるという事情もありました)。
またこのN-SAT-110は他のCSと異なり、BSと同じ電波形式・出力を持っていて、限りなくBSに近いCSとなっています。

次にBSです。

東経110度のBSAT-1a(BS4先発機)では、NHKとWOWOW、セントギガによるBSアナログ放送が行われています。
しかしこれは将来的には打ち切られ、全てが以下に述べるBSデジタル放送へ移行する予定です。

東経110度のBSAT-1bでは、BSAT-1aの予備衛星として、BSAT-1aが故障した時などに衛星放送の中継を行う役割をもっていましたが、現在このBSAT-1bを使って2000年12月1日よりBSデジタル放送が行われています。
これは後述のBSAT-2aの打ち上げが未だ延期となっている代替措置です。

東経110度に2001年2月頃に打ち上げられる予定のBSAT-2a(BS4後発機)では、BSデジタル放送が行われます。
BSデジタル放送のための衛星なので、既に打ち上げられているはずだったのですが、現状は打ち上げ延期となっています。
このBSAT-2aが打ち上がるまで、先の予備衛星BSAT-1bでBSデジタル放送を行っています。

現在はスカパーしかないCSだけど、今後どうなっていくの?

様々な企業合併や統合が進み、現在CS放送は、アナログ放送で高品位な音声放送を続けるミュージックバード(TOKYOFM系列)と、地上波やBS放送では見られない専門色の強い(マニアックな)番組をデジタルで多チャンネル放送しているスカパーしかありません。

このうちミュージックバードはBSデジタル放送においても放送を開始したため、将来的にそちらに移行することが予想されます。

そして大本命のスカパーですが、これは当面今の2衛星による放送を続けていく予定です。
他の放送にはない(例えばサッカーW杯の完全放送など)、独自色を活かして放送していくと思われますが、ここにきて新CSデジタル放送の話が持ち上がっています。

これは先に説明したN-SAT-110(110度CS)による放送のことで、日本テレビとWOWOWによる企業連合がプラットフォームとして参入することが決定しました。
(※CSの場合は地上波やBSと異なり、番組を制作する企業と番組を放送する企業(プラットフォーム)が異なります。例としてスカパーはプラットフォームです。)
具体的には三菱商事、日本テレビ、WOWOW、NTTコミュニケーション、NTTドコモの出資による「株式会社ワン・テン企画」を設立しました(因みにワン・テンとは110のことです)。

これに負けじと、スカパーはNTT東日本と共同出資で「株式会社データネットワークセンター」を設立、110度CSだけに留まらず、BSデジタルなどあらゆる放送メディアを睨んだ事業展開を計っています。
これにより、スカパーも110度CSプラットフォームに参入する構えです。

郵政省はこの110度CSを、現行のCS、つまりスカパーよりもデジタル放送の特性を活かした高機能なサービスを重点におくと表明しています。
つまりスカパーとは内容的に差異を持たせるということです。

現在参入を目指す番組制作企業には、アニメ・音楽専門の企画会社「エフ・ジェイ・エンターテイメント」(ソニー・ミュージックエンタテインメントや伊藤忠商事系のスペースシャワーネットワークなど6社出資)や、映画専門の企画会社「ハリウッドムービーズ」(伊藤忠商事やソニー・ピクチャーズテレビジョン・ジャパン、東北新社など5社出資) 、 「シーエス日本」(日本テレビ、読売新聞社、イトーヨーカ堂など出資)などがあります。

参入を目指す企業の全ては以下で確認できます。
byebye郵政省 プレスリリース

また、スカパーと110度CSとの差異において最も特徴的なのは、衛星位置の経度です。
この「110度」というのが最も重要なのです。
110度はBSと全く同じ衛星位置なので、同じアンテナでBS放送と110度CS放送が見られることになります。
これは消費者にとって、また放送事業者にとっても大きなチャンスとなります。
受信機(チューナ)の共用が実現すれば、事実上BSデジタルとCSデジタルの垣根がなくなり、多くの人がデジタル衛星放送を楽しむことが出来るようになるからです。

既に2000年11月、この共用チューナなどを含めた「デジタル放送STB」を核とするビジネスを展開するため、それまではライバル関係にあったソニーと松下電器産業、さらに東芝、日立製作所を中心に、スカパー、住友商事、テレビ朝日、テレビ東京、TBS、フジテレビ、日本テレビ、WOWOW、電通、東北新社の出資で「株式会社イー・ピー・エフ・ネット」が設立しています。
byebyeソニー プレスリリース

これは、日本国内のあらゆる企業が110度の下、ライバル関係を乗り越え「デジタル放送全体」を推進していこうとする表れと捉えることが出来るでしょう。

私は個人的にこのBSデジタル/CSデジタル共用チューナの登場を待とうと思っています。
将来的にはおそらく手ごろな値段で買うことが出来るようになると思うからです。

なお、現在使っているスカパーのチューナも引き続き利用するつもりです。
現行のスカパーにはスカパーにしかない魅力があると思うからです。
BS/110度CSのように衛星放送のメインストリームにはなれないでしょうが、スカパーはこれからも応援していきたいです。

BS/CS共用受信機

それじゃあ、BSはどうなっていくの?

2000年12月1日11時、BSデジタル本放送がスタートしました。
この瞬間から地上波主要民放系列5局は特別番組をサイマル(同時)放送、NHKは記念式典を地上波・BSアナログ・BSデジタルでサイマル生中継しました。

このように盛大な幕開けとなったBSデジタル放送ですが、どのように放送が変わるというのか、実感としてよく分からないのもまた事実です。

それはNHKでも中継されたBSデジタル本放送記念式典における、2人の話からも読み取れます。

CS以外の全放送波を総合的に放送するNHK会長が、BSデジタル放送への「大きな意気込み」を語ったのに対し、日本民間放送連盟(民放連)会長は、「BSデジタル放送を将来の地上波デジタル放送の牽引でしかない、もっと言えば(BSは民放連の本業である)地上波のライバルにさえなる」と語ったのです。

このように送り手の側でもその存在意義が揺れるBSデジタル放送ですが、全体として、今回のBSデジタル放送開始は、来たる110度CSを含めた「日本のデジタル放送の幕開け」と見ることができるでしょう。

「デジタル放送」だけならば、先述したようにスカパーが既に放送しています。
しかしこれはあくまで「中小放送局」の連合に過ぎず、地上波のようなメイン放送とはなりえませんでした。
その意味において、今までのCSデジタルはCATVの延長上にしかありませんでした。
しかし、今回のBSデジタル放送は、現在のアナログ地上波に取って代わる(民放連の意見を汲んで、代わる「かもしれない」としておいた方が良いでしょうか)、本格的なデジタル革命の始動だと考えられます。

従って、地上波デジタルの具体性が見えない現状では、BSデジタル放送の幕開けは、スカパーのそれよりもはるかにインパクトが大きく、意義深いものだと言えるでしょう。

さて、そのBSデジタル放送ですが、なお引き続き放送されるBSアナログ放送とともにそのチャンネル内訳を見ていきましょう。

BSチャンネル配列

デジタル方式では、アナログ方式に比べ一つの衛星チャンネルに数多くの番組チャンネルを流すことが出来るため、テレビ放送だけではなく、ラジオ放送、データ放送が行われています。
またそれにより、電話回線を使ったインタラクティブ(双方向)な放送を行えるようになっています。

それでは具体的な番組チャンネルを民放テレビ放送に限って紹介します。

放送局 リモコンのチャンネル 番組特徴
BS日テレ
(141-143ch)
4チャンネル 地上波とは違い、1テーマに特化した番組編成。
ニュース専門番組など。
BS朝日
(151-153ch)
5チャンネル 30〜40代をターゲットに、本格ドキュメンタリー番組を結集。
BS-i
(161-163ch)
6チャンネル データ放送、双方向サービスに力を入れる。
双方向ドラマなど。
BSジャパン
(171-173ch)
7チャンネル テレビ東京系列の番組や、日経グループによる経済番組で編成。
BSフジ
(181-183ch)
8チャンネル 若者をターゲットに、情報とエンタテインメントのおもちゃ箱を目指す。
WOWOW
(191-193ch)
9チャンネル HDTV、SDTVにPPVシステムも加えて映画・音楽・スポーツを放送。
スター・チャンネルBS
(200ch)
10チャンネル 5.1chサラウンド放送を中心に、ハリウッド映画など24時間ノンストップ放送。

なお全ての番組チャンネルやBSデジタル放送に関する説明は以下のサイトに詳しいです。
byebyeBSデジタル放送推進協会

また今までの地上波などと同じ走査線数の通常放送(SDTV)よりも、上図のようにより幅広い電波割当を使うことで走査線数を多くした高画質放送(HDTV、デジタルハイビジョン)を、BS朝日、BS-i、WOWOW(一部をアナログでサイマル放送)、BSジャパン、BS日テレ、BSフジ、NHKデジタルハイビジョン(BSアナログ9チャンネルとサイマル放送)が行っています。
SDTVはNHK BS-1(アナログとサイマル放送)、NHK BS-2(アナログとサイマル放送)、スター・チャンネルBSが行っています。

そしてこのHDTVですが、放送局の判断でSDTVに画質を落として3チャンネル同時に放送することも可能です。
だから同じチャンネル内で3つの違う番組が放送されることもあるということです。
ですから、WOWOWの「一部をアナログでサイマル放送」という意味は、実はアナログ(BSアナログ5チャンネル)で、HDTVの時はそのままの番組(といっても画質は当然落ちます)を、SDTVで3チャンネルに分けて放送の時はそのうちの1チャンネル(BSデジタル191チャンネル)をサイマル放送するということです。

このようにBSデジタル放送は、一部がBSアナログ放送とサイマル放送しながら、その発展を続けていこうとしています。
ですからBSアナログが見られる環境にある方は、急いでBSデジタルチューナーを買う必要もありませんが、将来的にはBSアナログ放送は全て終了となるので、いずれはチューナーを買わなければならなくなります。
しかしCSのところで説明したように、BS/CS共用チューナの発売も検討されているため、今すぐ買う必要はないでしょう。

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