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限りなく日常に近い幸せ

桜の開花が早くも宣言された3月中旬。暖かな春の風に誘われて、貴重な休日を、私は歩いてみた。

久々に歩く地元の街。渋谷のそれとは程遠く、そんなに賑わっていない商店街の人々とすれ違いながら、ぽかぽかの陽気に、私の歩みも心なしか弾んでいた。

そんな中、私の脳は新たな「発見」を求めている。社会人生活もまもなく1年経とうという頃、仕事である「新規事業」を常に考える癖が少しは板に付いてきたらしい。

インターネットがより身近になる近未来、今流行のいわゆるブロードバンド・ネットワークを利用して大きな金儲けができないか、…ということを日々考えいつの日か実現するのが私の本業であり、目下のチャレンジであるのだが、そんなことを何も休日に考えなくたっていいのに、とちょっと思いつつも、そういう自分が嫌いでもなかったりする。

今こうして歩いている自分は今ここでブロードバンドを使えないだろうか。今この場所で繋がるブロードバンド。…答えは一つしかない。ケータイだ。

以前書いたようにケータイには少なからず大きな期待をしている私であるが、何よりその「ケータイ」性を利用して、「今そこを歩いているその人」に、何かこれまでにない新しいサービスが提供できないかと考えている。

そんな私は先日、気になる記事を見つけた。
ZDNet JAPAN Mobile CHANNEL内記事

ナビタイムジャパンというベンチャー企業が提案する「トータルナビ」 という概念は、今外を歩いている人が目的地に移動するために必要になる情報がすべて盛り込まれているシステムだという。単なる「電車乗り換え」情報ではない。ケータイに表示される地図には、歩くべき道に線が引かれ、それをたどっていけば目的地に到達する。しかも電子コンパスの向きに合わせて地図が進行方向に向かって回転するという。

見ず知らずの街に行き着いたとしても、これさえあれば目的地にたどり着くことに不便しない。しかも深夜、飲みすぎて終電を逃したとしても (良くあるんだな、これが…笑)始発を待つよりも早ければ、1時間歩いても徒歩のルートを候補として表示するという。これぞ、ナビ決定版である。凄い、凄すぎる!

…しかしながらどうだろう。今ここでケータイを使うよりも、今、私が 我が街を歩いているこの瞬間の心地よさ。ほんわかな日差しの中で、誰にも邪魔されない、何物にも代え難い、時間に縛られない、生き生きとしたこの一瞬。これは便利なケータイなんかに邪魔されなくとも至福の喜びであって、幸せそのものではないか!

そして思い切って胸に吸い込む、あったかなさわやかな空気!(と同時にかみ締める花粉症でないことの幸せ!) 一通り買い物を済ませケータイはポケットにしまったまま歩く傍らで、キャッチボールをする父親とおぼしき人とはしゃぎまくる二人の子供。…ああ、懐かしくも心があったかくなる瞬間を、少し贅沢に思えた私がそこにいた。

大事なものは、すぐそこにある。私はそれを、忘れたくないと思った。

2002.03.18.