Artist Series
Vol.2 "Shena Ringo
"

 

 今回は椎名林檎さんの「ここでキスして。」というマキシシングルと「無罪モラトリアム」というアルバムです。
 最近物議を醸している問題作ですが、より詳しくその問題に突っ込んでみたいと思います。

 

椎名林檎 「ここでキスして。」

TOCT-4133
1999年1月20日発売

椎名林檎 「無罪モラトリアム」

TOCT-24065
1999年2月24日発売

共に東芝EMI株式会社
byebye Shena Ringo「性(さが)」

今何故か、凄い売れ行きを見せる彼女の3rdシングル/1stアルバム。
聴く時点で既に壊れていることを目当てにされている存在。
徹底的な破壊のイメージを抱いている存在。
そんな風に彼女を見る。
様々な人がレコメンドしてるし、それは間違っていないと思う。
私も大好きだし、だからこうして紹介している。
そのおかげでこそ、流星の如くスターダムにのし上がれたのだから。
ただ。
少し、早い。
まだ20歳。私と同い年。
凄いのは分かる、だからとは言え、こうも騒ぐ世の中はどんな世の中なのか。
病んでいないとは言わないが、でも。
ある意味「普通」が多過ぎて、だから「変人」も多過ぎる世の中。
「変人」が聴くのか。
それは、その存在意義のために?
「普通」はどう聴くのか。
変人をあざけるためなのか?
そうかむしろ、普通と同調するためなのか?
…だとすれば、哀しい。

難解な歌詞。
畳み掛けるような破壊。
それが心地良いのと同時に、それでしかありえないということも、聴きながら思う。
少なくとも聴く側はそう理解すべきだ。

短い曲。
唸り叫ぶ声。
曲とねちっこく絡み合う。
すごい才能だ。
20にしては完成された過ぎた美学だなと、思う。

つまり「破壊の既製品」となってほしくないというか。
もっとしっかりと存在してほしいというか。
少なくとも、風潮だけで流すべきではない。

ジャケットに書かれる「欠落人間」。
まさに足りないイメージ。
それでいて底無し沼のように貧欲。
自らでそう言えてしまうのが、怖い。
怖いくらい、魅力的だと思う。女として。

私が期待し過ぎるのか?
でもそれくらいはやってのける彼女に違いない。

#1
正しい街
のっけからこのリズムにやられた。
深く強く韻を踏むこのリズム。
空虚な街の雰囲気が正しいとする?
これはその中で歌った歌でしかない。
#2
歌舞伎町の女王
シングルの時から気にはしていたが、今ほど思ってはいなかった。
それにしても博多の子にこうも簡単に歌われてもまずいだろう、新宿の民よ。
小気味良い転調、繰り返す「歓楽街」。
ストレートなまでの歌舞伎町を歌いながら。
その側で感じるのはこうした腐敗感というか、どこまでも突き進む破壊感というか。
「女に成った私が売るのは自分だけで」
精一杯な生き様すら感じる。
#3
丸の内サディスティック
「愛せど」なんて言葉で、もうSASティック(桑田的歌唱術とも言う)。
歌詞が歌詞として聞こえない分、そこに残されるのは完全に「Brown Cherry(という歌がSASにある)」的聴き方である。
「620」とか「青 噛んで熟って頂戴」なぞ。
熟って、についてはもう、その極致。
内容に関しては彼女の「盛者必衰」的思考を改めて、思う。
#4
幸福論(悦楽編)
シングルとは違ってデストーションがかった声と尖ったリズム。
この方が本作には「らしい」在り方だと思う。
特に最終部。
これがデビュー歌というのが、信じ難い才能である。
#7
積木遊び
彼女の場合どれも曲調が良いのだが、これはまた彼女らしい感じ。良い。
変拍子と3連ドラム、挟む大和メロディ、そして英語適当日本語。
心地よい和洋折衷ロック。
#1#8
ここでキスして。
これで一気にブレイク。
私的にも一気にブレイク。
というかストレートな歌詞。
いつもの彼女にしては。
これこそ理想の代弁と言うか。
曲も良い。
分かりやすい。
適度に壊れて。
でも良い。
#9
同じ夜
第一印象は「EVA劇場版」って感じ。
バイオリンと詞が特に。
詞は相当気合入っている。
#10
警告
ストレートなロック。
社会と個人を上手く絡める詞に才能を感じる。
#11
モルヒネ
良く考えるとこんな曲調に乗せて歌ってはまずいだろう。
自己破壊の極致。
これはモラトリアムの範囲?
いや、違うだろう。
#3
リモートコントローラー
何かRPGの大ボスが出てくるかのような壮大さ。
最初そんなイメージを持った。
全てを欲望のままに壊れて暴れる幼児のような。
それを大人が滑稽にやるとやっぱり「危ないな」となるのだろう。
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