Artist Series
Vol.1
"Maaya Sakamoto"

 

今回紹介するのは坂本真綾さんの「DIVE」というアルバムです。
去年の暮れからずっと聴き続けるアルバムで、絶対紹介しなければいけないと思っていました。
私の中では特に重要なアルバムです。

 

坂本真綾 「DIVE」

VICL-60320
1998年12月19日発売
ビクターエンタテインメント株式会社
byebye 
byebye 

映画の吹き替えやアニメの声優として、またラジオのパーソナリティとして活躍する彼女の2ndアルバム。
私は彼女をラジオで知ったのであるが、歌手としての彼女の魅力を知ったのは「ともだち」という歌である。
前作のアルバムにはその英語詞バージョン「MY BEST FRIEND」が収められており、そこで受けた感動を予感しながら本作を聴いた。
だから特定の歌を目当てにしていたのではなく、ただ漠然とした期待感があっただけであるが、以来、未だに聴き続けている。

最初に通して聴いた時、前作を「動」とするなら、本作は全体的に「静」なイメージを持った。
その曲調にしても、またジャケットにしても。
つまりタイトルの「DIVE」という「動」的な言葉は何故?、という感覚があった。
しかしながら本作を聴き続けるうちに、見かけの「静」の内にある、力強い「動」を感じ取るようになった。

それは自問自答的でしかし確実な自身作詞の「ID」で始まり、シングル発表曲「走る」、英語詞「Baby Face」、哀愁感の中にある「パイロット」。
そしてまさにこのアルバムの象徴でもある岩里祐穂作詞の「ユッカ」や「孤独」へ流れ、最終曲「DIVE」まで途切れなく一貫した何かを純粋に、ストレートに伝える。

そこにはまず、曲の良さがある。
菅野よう子という、これまた優れたプロデューサが遺憾無くその才能を発揮している。
普遍的なイメージを思わせつつ、流れるように綺麗に優雅に、だが地にしっかり足をつけた曲調は自然と聴くものを魅了する。
その上に彼女の美しい歌声が、あたかも予定調和の如く、ぴったりとはまる。
しかし、何よりもこのアルバムが伝えるものは決してその美しさだけではなく、彼女のまさに「力強い」歌声であり、それは美しくもあるが実はしっかりとした気丈でしたたかな強さに他ならない。

「歌手」とはただメロディに合わせて歌うだけではなく、つまりはこのようなメッセージを聴くものに届けることが出来る、そのことにこそ存在があるのだ、と感じさせる好アルバムであることは間違い無い。

#8

ユッカ

本作中でも特に好きな歌。
ユッカとはユリ科ユッカ属に属する植物の総称であるそうで、砂漠の中で花言葉の如く「勇壮」に生きるらしい。
これは、生きることへの決断を勇気付けてくれる歌である。

「亡くしたものばかりいつも持ち歩いていた 思い出は笑顔や温もりや幸せまで持ってる」

これまで生きてきたことによる、苦しみや悲しみ、そしてそれを乗り越えた笑顔や温もりは大事な宝物であり、幸せなんだと。
そしてそれを大事にすることが、悲しみになることさえも知っているのに、だ。

「手渡された悲しみ それは乗り越えるためにあると空見上げ思う」

今ここにある悲しみは、それは例えば生きていくこと自体の「原罪」みたいなものとも考えられるけど、そうじゃない。
一人一人が持ってる、大事な悲しみなのかもしれない。

「誰も一人で死んでゆくけど 一人で生きてゆけない」

この美しいメロディの中で、彼女の発する「死ぬ」って言葉が、強烈だった。
自分、特に「今」という自分、が死ぬことの恐ろしさ。
例えばそれは生命を絶つという意味だけではなくて、ここにある今まで作り上げてきた思い出が、死ぬことの悲しみ。
結局は誰もが、一人で死んでいくしかない。
でもだからこそ、一人で生きていくわけにはいかない。
そこには誰かがいるから。
だから今という自分がなくなるというのは、逆を言えば、まさに未来を生きるという意味でもあるということ。
そういう悲しみに対する怖さに、このユッカという歌は果敢に立ち向かっている。

#10

孤独

孤独を、愛という言葉で感じている歌。
それは負けではないのに、負けてしまう悲しみでもある。

「人はどうして愛したら愛されることでしか 幸せになれないんだろう」

それは結局、人が孤独だからでしかない。
でも、だからこそ幸せになれるのかもしれないと、思える。

「自分の心が放つあなたへの思いだけで 喜びを感じたいよ」

でもそれが出来ないのが、生きる本当の悲しみなのかもしれない。
ただ、立ち向かうしかない。
自分に他人に飛び込む(=DIVE)するしかない。

この文章に対するあなたのメッセージをお待ちしています。こちらよりご記入頂ければ幸いです。

 

 

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