2000年 11月

 みんなへ

 4年間の大学サークル活動が、最後の学園祭で区切りをつける。
 出来なかったこと、出来るわけなかったこともあったけど、全力で走り抜けた気持ちがある。
 学生生活(モラトリアム)は、思えば気苦労と失敗と後悔で、人様に見せられない恥ずかしいことばかりだった。
 きっとそのせいで人様よりも時間がかかってしまったけど、私は今になって、ずっと捜し求めていたものに最も近そうな答えに気付き始めている。
 独りじゃなしえない、でも独りでしか対峙できない、情熱。
 もしかするとそれは言葉に出来ないかもしれないけど、情熱、のようなもの。
 独りがみんなに、みんなが独りに与える、その触ると火傷しそうなくらいの、情熱。
 ベクトルも何も、はなから気にしないで。
 思う存分その熱さを、明日が見える今という瞬間に。
 悩み苦しんで、そう、悩み苦しんだからこそ、冷めることのないその熱さを、いろんなひとに振りまいて、そして、最後に心から楽しむことが出来たのなら。
 時間軸の上に、私がいる。でも、どうしようもなくても、私はみんなといつでも熱く、なれる。
 だから私は今、明日が思いっきり、楽しみ。

 2000.11.27.

 熱く論ぜよ!

 何も言わないことじゃない、何も言おうとも思わないこと、これ由々しき問題、熱く論ぜよ!
 文句を吐かないことじゃない、文句の一つも見つけようともしないこと、これ由々しき問題、熱く論ぜよ!
 夢を持たないことじゃない、夢を持とうともしないこと、これ由々しき問題、熱く論ぜよ!
 爆発しないことじゃない、カッコつけた風で爆発してみせないこと、これ由々しき問題、熱く論ぜよ!
 涙を見せないことじゃない、涙を流さないこと、これ由々しき問題、熱く論ぜよ!

 …嗚呼、嗚呼。今日はすっきりと語った。とくと語り合った。これ即ち、気持ちいい。生きること。

 2000.11.21.

 明日が輝く場所へ

 それは、全く予期していなかった。
 でも、何年も待ち望んでいた。
 目にその文字が、飛び込んだ瞬間。
 その一枚との出会いは、待ち望んだ時間からすればとてつもなくあっけないものだった。

 もう会えないと思っていた。
 あのひとと同じように、もう会えないと思っていた。
 それが、ふとした瞬間が、心のドキッを呼び覚ます。
 中古シングルCDの詰まったワゴンに、前のめりになったまま、呆然と。

 何度も励まされた、おぼろげな歌詞と、確実に心に残っていた旋律。
 誰も覚えていないこの歌に、私はどれだけの希望を受け取ったか。
 今、初めて見る古びたジャケットには'93の文字。そうか、やっぱり93年か。
 私は今の今になって、ようやく明日が見えたのかもしれない。

 独り流れない時間は、長すぎたのか。

 それともこれで、良かったのか。

 明日が見える場所へ。明日が輝く場所へ。
 本当の意味は、今日、初めて分かったのかも、しれない。

 2000.11.14.

 そこにある、よろこび

 朝日放送のスペシャル番組を二日にわたって見た。
 北野武がリポーターとなって世界各地を旅した。
 一日目が「人体」、二日目が「時空」というテーマ。
 私は特に「時空」という言葉に惹かれて、番組を見ていた。
 …どうやって、時空の謎を解き明かすのだろう。

 人知には届かないところ。

 広い空から抜け出すこともままならない、人間。
 そして自身の身体のことすら分からない、人間。

 数あった旅の最後に、武はスペインのバルセロナを訪れた。
 百年も前から今の今でさえ創り続けられている、教会。
 創り終わることではなく、創り続けることが、人間のよろこびだった。
 いつか来る、音楽の調べを聴くときのために。

 …この大仕事を始めたガウディの見せる生きざまは、まさしく時空を越えていた。
 大きな思想、大きな包容。
 妙な納得と、触れられないものに触れたかのような感動。

 心の底辺を流れたその振動を、ひとは大事にするために、自然に対峙するのかもしれない。

 2000.11.5.

 

 

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