2000年 2月

 月の端

 一口に「具合が悪い」と言っても2つあって。
 例えば精神が病むと、身体がそれをカバーしようと無理をする。
 身体を壊せば、何処にも動けず気が滅入ってくる。
 だからこの私は例えこの世でたった一つの存在であったとしても、それ自体は身体だけでは致し方のない、精神だけでは脆弱なことに気付くべきだ。
 風に揺れるつり橋のように、しなやかにその風を受け止めなければならない。
 ただ、返す返すも向かい風に順応するべきではない。
 調和とまでは行かずとも、秘められた力を最大限に発揮するその刹那こそ。
 身を持って泣いたり笑ったりするその瞬間に重なって、まさに私はこの足でその揺れる橋を渡らんとする。
 そして今。
 身体を思い、ビタミン豊富なみかんを食べる夜更け。

 2000.2.29.

 認知

 個人が叫ばれる中で。
 自由を疑わない中で。
 どんなに突っぱねても。
 どれだけ真剣でも。
 独りでは生きられない人。
 原罪を負いながら、償いの心を忘れて。
 自分を守るだけに他人が傷ついて。
 誰もが気づくなかれとそこかしこで、もがくもがく、もがく。
 いと醜し。

 2000.2.23.

 パッキン

 悔恨。2種類ある。
 やらない悔恨とやった悔恨。
 前者より後者の方が絶対良いはずで、それは正論。
 ただそこにはそれ以上の虚無があることもまた事実。
 埋められない虚無に対して、人は誰一人として違った行動を取らない。
 故にそこにあるのは質も同じで理由などない直感的な仕草。
 ただ得られるヒントもそこら中に転がっている。
 そう気付くのか気付かないのか、足掻く敗北の、人の強さをここに。
 壊されたパッキン。

 2000.2.14.

 依存

 共存することによる、恵み。
 少なくとも今、確かにそうして繁栄している。
 追って人は、余りにも分かり易く理不尽な過ち。
 それは脆くとも儚く生きていける綱だったのに。
 効(かい)を忘れ手放した瞬間、それは何を意味するのか。
 木も空も、草も鳥も、本当は過酷なレースで闘っているのに。
 夢にまで見た完結、それはあたかも幻で、最期の死。

 2000.2.7.

 埋め込まれた下地

 それまでの尽力が気付かないうちに堆積して、うっすらと見えかける瞬間。
 花のような愛しさと、風のような無情感。
 周りで密かに囁いてくれた言葉の新鮮さに、心の火が灯る。
 引き締める夜風。独りの夜。
 スーツに身を固め、やらんことをなすべきことを、コツコツと足音を立てながら帰宅。

 2000.2.4.

 

 

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