1999年 9月

 9月の風

 晴れる空。 一人歩く静かな街。河川敷。
 地元の匂いはすっかり秋めいて。
 集う人。普段は会えない人が。
 自然の中で、魂の歌声が、時代を超えて響き渡る。
 踊る人。踊れない人。
 そこには不幸なんて笑い飛ばすかのような、余裕の心。
 弾む心。遠慮の心。壁無き者。羨む心。
 歌にその場が支配されて。少しずつ、打ち解ける心。
 カッコいい姿を目に焼き付けて。誓う心。
 はたと目をやれば。
 重なる幻想。それは夢? 誰?
 縮む心。揺らぐ心。どうしようもなく小さく。
 最後の最後まで捨てきれず、バカみたいにうろついて、嘆いて、カッコつけてみて、ダメな男。
 一言も言えず、また今年も、秋の風の匂いがした。

 1999.9.26.

 自転車

 久々に殿の声を聴いた。
 ぼそっとつぶやく。
 2つのことは一緒にやってこない。
 どこかで面倒で、でも必死に足はこいでる。
 倒れないように。
 それは、死なないように。

 1999.9.20.

 祭りのあと

 夏が終わりを告げる。
 暗い闇の中で舞い込んだのは、気付かなかった光。
 その光は厚い壁の隙間から零れる様に、細く。
 ただ僕は独り、見ないように目を閉じて。
 いつしか疲れ切って、座りこむ足下。
 滴る水は湧き上がる泉となって、蝕まれた身体を癒す。
 宴。刹那。夢は幻ではなく、現実となって。
 目の前に、奴ら。
 長い宵。
 打ちつけるは、秋の雨。

 1999.9.15.

 情けなし

 自分。
 気付かぬ思い。おせっかい。
 真実。
 傷つき、乗り越える糧。
 涙。出るもの。出ぬもの。
 愛。見えない、傷。

 1999.9.4.

 欠陥商品

 不貞腐れる貝。
 口実を付けた行動。
 同じ場所をぐるぐると回る。
 気付いたら眠りに落ちていた。
 暫しの時間。
 はたと立ち上がって。
 再び眠る前に、欠けた心の所為とした。

 1999.9.1.

 

 

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