1999年 6月

 瞬夏周到

 ちょっと何かをやり遂げたり、どうしようもなく何もしたくない時はテレビを見る。
 テレビ、はこの上なく楽だ。
 何も追わなくていい。目を向けていれば、それでいい。
 気付けば外国人が討論をしている。
 他人の国の問題を、自分の国のように論じている。

 ははぁ、これが国際人なんだと。
 国旗だ国歌だ国民だなんて、政治家は心にもないこと喋っているけど。
 ここまで国が国でない国で。
 切に訴えかけるのはむしろ異国の人たちだとは。

 ははぁ、これが国際化なんだと。
 街で聞いた、心に響かない言葉。
 叫ばれるのはいつまでたっても「僕の自由」、だけだから。

 ははぁ、これが平和なんだって。…はぁ。

 いろいろあった月だった。
 心を揺さぶるっていうのはこういうことかもしれない。
 でもその割には、やるべきことを忘れてきた。

 ふっと文章が書きたくなる時がある。
 その時、私は溢れんばかりに書き進める。
 この稀有な時を。
 夏の入り口で。

 1999.6.30.

 命懸けの勝負

 そこには寡黙な男たちがいた。

 表に出ようとしない。
 それが自分の役目と諭す。
 簡単に、淡々と。
 端々に隠された真実が重みとなって心を打つ。
 滲み出る謙虚。
 とてつもない自信と共に。

 通り過ぎる刹那。
 ほとばしる緊張。
 交わさない言葉に。
 嘘の無い人格が。
 存在が全てを語る。
 受け取ったのは確かな力だ。

 一瞬の世界。
 それが勝負の世界。
 己の役目に、命を懸ける男がいた。

 1999.6.10.

 

 

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