1999年 12月

 2000年の夜明け

 一足お先にSAS年越しライブを堪能してきた。
 個人的に区切りを付ける為、大掃除を繰り返している最中。
 2000年に託けた区切りだとしても、それは己に必要な瞬間。
 世の中も何となく欲しているこの瞬間を、今年もSASと共に迎える。
 ファンと一体となれる選曲は、彼らなりのメッセージ。
 2度流された新曲は、心からのアンサーソング。
 一つ前進することは、決して過去を捨てることじゃないことを。
 そこに留まることが、決して未来を捨てることじゃないことを。
 今ここに立ち会える喜びと、迎えなければならない明日への不安。
 思い思いに身を任せ、日々の戯言を昇華し、糧として。
 1000年代最後に確認したのは、消せど燃ゆる、凛とした「あなたと私の」メッセージ。

 1999.12.27.

 空白

 誤ってそれまでの全メールを消してしまった。
 …一瞬の出来事。
 無情なデジタルは2度と返してくれなかった。
 バックアップでも生き返らない1ヶ月。
 デジタルで蝕まれた身体に空いた穴。
 それまで何が埋まっていたのだろう。
 目で追える過去が、消えてしまった。
 何をしてきたか分からなくなるような、戸惑い。
 消したくない過去の自分が。
 今の自分が消えてしまいそうな。
 …一瞬の感覚。
 でも消えた方が良かったのかもしれない。
 突き刺さったのは、今の痛み。
 今しか取り返せないのはこの痛みなのかもしれないと。
 そう思えた今日、昨日より少しだけ今を生きているのかもしれない。

 1999.12.19.

 お天気屋

 しなければならない行動と、それを確証してくれる存在があまりにも希薄だと感じた瞬間。
 己の希薄さには気付かず、いや気付いていようとも口にはせず。
 口にしない実感と口に出来ない愚かさ、まさに2つの理由で雁字搦めの時間。
 否定したくない感情だけが、前にも味わったような感触で迫り来る。
 目覚めた時、夢に滲む心の吐息。
 数時間後には様変わりしている、余りにもあやふやで身勝手な心の。

 1999.12.17.

 妄想

 物思いに耽ることが悪いのではない。
 孤独になることが悪いのではない。
 自らに生きる為に。
 人を切り裂かねばならない。
 人を食い尽くさねばならない。
 過酷な世界での置き場のない怒りを、人は自らに閉じ込める。
 それは人の、大切な知恵。濁っていようとも、素晴らしい知恵。
 誰もの。その量も質さえも問わなければ、誰もの。
 ただ何処からも逃げている身勝手な人は。一向に前を向けない寂しい人は。
 妄想をも壊されることを拒んでいる、小さな人。

 1999.12.15.

 予定という調和

 見通しの良い景色に心を奪われる。
 寒々としてもくっきり見渡せるガラス越しに目が移る。
 いつものように瞼を閉じず、この目で見る世界が間近に感じられて。
 今まで分からなかった道筋が手に取るように分かる感触。
 気付かぬ差異が、溢れ出る彩となってこの身に。
 まばらに埋まった席に座し、ゴトゴトと揺られ。
 目の前に「優先席」だと席をためらった女の子、素直にかわいいと思った車内。

 1999.12.13.

 友の道

 自分のことで精一杯なら他人の道は到底理解し得るものでなく。
 だが杯を交えて感ずればそれも和の享受とし。
 独り悩めど決して楽にはならず、和に埋もれずともその稀有さを。
 閉鎖的な存在だと仮にすれど、神の領域など、その孤独さに嘲笑う。
 受け入れ難い波、受け入れずさらされても結局は。
 諦めもせず、ただのらりくらりとやりのける為のあなたの力。必須。

 1999.12.10.

 続く道

 無常なかれと知りつつも、涌き出る慕情に身を委ねる快楽と伴うどうしようもない痛み。
 不完全とは言え、燻りつづけることの勇気と悦楽。
 やり残す後悔だけは避けようと、遅すぎた懐古に自らを切り刻んだ時から何が変わったのだろうか。
 確実に時は流れ、確実に掴めるのは今という刹那だけ。
 今、煙は火種とともに消え去り、風はその灰を空に撒き散らす。
 今まで見守ってくれた同志へ、計れないくらいの謝辞と共に終幕。
 凝縮した時間に言葉は要らない。
 さらなる道が、まだ続いている。

 1999.12.9.

 趣味と仕事

 社会に認められることが大人の証だとすれば、その責務は果たさねばならない。
 社会に認められることが生きる手段だとすれば、自らの存在は自らで模索しなくてはならない。
 それらが決して同義にはならない故に、心の隙間は埋まらずに、さまよい、さすらい。
 悩めど一人で歩こうと、付きそう手が邪魔だと振り払い、いつしかその手の温もりを忘れさろうと。
 そうやって見つけたこの趣味は、誰かに誇れるものだから。
 敢えて探すのはやめよう。 やりたいことをただ。憂える努力は誰もがしている。

 1999.12.7.

 空腹

 デジタルという装置で世をせしめても所詮アナログにしか生きられない人として、しかしながら「一区切り」があるとするならば。
 やり終えた実感と少なくない悔恨と過去を壊す不安。
 時の差し迫りを待つしか将来が無い孤独な少年のように生きられたら、それはきっと満ちた月。
 だが孤独であろうとも人にはその差し迫りを創り出す力が、極めて矮小化した形で存在する。
 それは最後に残された感覚。
 「楽しさ」とはその為の揺らぎであり、怠惰で苦しくて満ち満ちようとした、なれの果て。

 1999.12.5.

 

 

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