SSS-001 "TSUNAMI"

「津波のような侘しさに I Know・・ 怯えてる」

2000/01/08 @640(23:22)

 

<Song Data>

2000/01/26 on Sale
12cmパッケージCDS(初回限定プレス)
8cmCDS
12inch SHAPED LP
c/w 通りゃんせ

<Reviews>

記念すべき最初のSSSは一番好きな歌にしようと思っていたが、敢えて発売前にこの歌を選んだ。

20周年「夏の企画」アルバムとしながらもベスト的内容となった「海のYear!!」、デビュー以来の活動を集大成した2種類のライブ「渚園」「歌舞伎町」、公式に残っている全てのデータを総括したMOSA展ならびにCD/DVD-ROM「SPACE MOSA」、そして平成の夜明けから恒例となり、先頃1000年代最後をカウントダウンした年越しライブ「晴れ着DEポン」を成功させたSASが2000年の最初を飾るニューシングル「TSUNAMI」。

最新アルバム「さくら」にて既成の殻を自ら打ち壊し、前作シングル「イエローマン」にてそれまでの「勝手にシンドバッド」を全否定した後で、この熟年バンドがいったいどういう道を歩むべきなのか、自身が出したアンサーソングが今作である。

意外なまで単純明快とも言える歌詞と、曲調。
しかしながらそこには壊しあげたはずの「SAS節」ともいえる独創的な流れ、「運命(さだめ) 」「カモメ」といったフレーズ、昔と変わらないSASが確かにいた。

「もうシンドバッドはやらない」と渚園で神妙に口にした桑田佳祐。
20年間その時その時自分達が歌ってきたことに、喜びが、後悔が、自信があるから尚更、これからの未来にきっと他の誰にも体験し得ない枷があったのかもしれない。

そんな最中に、直球ど真ん中のバラード。
「産業ロック」という言葉を借りれば分かりやすい現実の音楽世界で、2000年のこれからを決める多大なプロモートを思えば、穿った見方は容易かもしれない。

だが歌詞に目を落とすと、あまりにも普遍的な文章にしかし、「結局はそうなのかもしれない」と多くの人を納得させる、昨今の楽曲にはあまり見られない「力」を持っていることに誰しもが気付くだろう。

「見つめ合うと素直にお喋り出来ない」

サビに来る「お喋り」という言葉、何となく身に覚えのある情緒的なあの空間が、心に広がる。

最後に来る「死ぬまで好きと言って」の旋律は、SAS節と言わずして、何と表現したらよいのか分からない。

「好きなのに泣いたのは何故?」

心の奥底にうごめく何だかよく分からない心理と、結局はそれにすがるしかない心境。
形は違えど誰もが経験してるはずの行為に、分かりやすいメロディが花を添える。

桑田自身はレギュラーFMラジオにて「TSUNAMIは歌舞伎町(昨年行われたシークレットライブ)にて感じた(ファンの)愛に答える歌」と公言する。
心に素直に入ってくる旋律は、この歌い手の明確な気持ちのせいなのかもしれない。

それは20年に渡ってSASが英語の歌詞を借りて伝えてきた「和製ロック」の原点とも言える、「侘しさ」を津波のように例えたところからも良く分かる。
途方もなく押し寄せる侘しさ、何とも言えないあいまいで、しかし津波と言ってしまうくらい、大きく恐ろしい心の存在を、さらりとサビで歌い上げる。
津波をアルファベット表記にした理由は定かでないが、基本的に「なんちゃって外国人」である彼らの彼らなりの自己主張なんじゃないかと思えばそれも、納得出来るような気がする。

あるファンの方がこの歌に対して2000年の「いとしのエリー」という表現をしていたが、いつも挑戦をし続けるSASにとって、これは「渚園」の時ではありえなかった、しかしながら今は心からそう言える、最高の賛辞になる気がしてならない。

津波のような感謝と愛とそしていろんな感情が、この歌を、あらゆる人をきっと包み込んで。

<終わり(敬称略)>

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