やっぱラジオが好きだ!

2000/12/13 @560(21:27)

 

ラジオはテレビにとって代わられた。

そんなイメージが世間で一般的なのは事実だ。確かにテレビは音に加えて映像を映し出すことが出来るため、表現媒体としては明らかに優位に立つし、事実、テレビを見ない人は少なくても、ラジオを聴かない人は少なくない。現に新聞におけるラジオ欄は隅においやられている。

しかし私はやっぱりラジオが好きだ。

私がラジオを聴くようになったのは中学生の頃からだ。それは音楽を聴くようになった年代とも重なるし、お互いが大きな相関関係を持っているのは想像に難くない。

まず、歴史も古く気軽にどこでも聴けるAMラジオでは、何故か良好に受信出来た「文化放送」を聴き始めた。一般的にAMと言えばTBSラジオやニッポン放送などが有名だが、私の家では文化放送が電波の「幅」を利かせていた。

この文化放送では運命的な出会いをした。平成5年4月から始まり、以降4年間平日21時から生放送をしていた番組。いわゆる若者向けの「ワイド番組」だが、私にとっては毎日の楽しみだった。その番組名は「斉藤一美のとんカツワイド」。

最初は興味なかったものの、とにかく喋りが上手で面白くて馬鹿げたことを真剣にやってリスナーを笑わせようとする、冬でも暑苦しいくらいのパーソナリティによる「話術」にすっかりはまってしまった。

このパーソナリティは文化放送アナウンサーの斉藤一美さん(一美といっても男性です)。面白企画で面白トークを連発し、ゲストには軽快に突っ込みながらもしかし、リスナーの悩みにはこれでもかというくらい真剣に答えていたように記憶している。一美さんの話に相づちを打ちながら番組を聴いている私はその時、自分自身をラジオの放送に投影していた。

気付いたら「とんカツメイト(この番組のリスナーの愛称)」となっていた私にとって、ことさら面白い企画があった。「小便クイズ」というお下品極まりないこの企画は、トイレからの生中継で、クイズに答えるために小便をしなければならない(その音を解答権にする)という私にとっては革命的なシステムだった(笑)。お下劣な笑いとまさに音の世界の融合。臨場感溢れるこの企画は、PTAが何と言おうといつかどこかで復活しないかと密かに願っている。

何にせよ、この「とんカツワイド」からは音だけではない、何か心に訴えかけるものを感じ取っていた。毎日毎日喋り続けても楽しい一美さんは、きっと毎日毎日が楽しいんだろうなあと思っていた。彼の発する生の声に、私は身近にこの人を感じていたのだろう。それはラジオの持つ不思議な魅力に触れた瞬間でもあった。

4月と10月。ラジオ番組にとっては一番大切な時期である。それは「番組改変」の時期。つまり、人気のない番組が息絶える時期である。1997年4月、雨の入学式を終え、大学生になりたてで嬉しいはずの自分に、自然と涙がこぼれた。今日で番組を終えることになった一美さんの最初で最後の涙の声に、私はラジオの前で独り泣いた。そして大学では絶対にラジオサークルを選ぶことを決めた。自分でも思いがけない衝動だった。

次に、ステレオかつ綺麗な音質で放送しているFMラジオでは、地元埼玉の放送局「NACK5(FM埼玉)」を聴いていた。今でもFMと言えばNACK5がお気に入りだが、この放送局は今思えば異彩な「御洒落さ」を持っていた。

「MUSIC」「SPORTS」「ENTERTAINMENT」を軸とした放送は、FMで唯一野球中継やJリーグ中継を行っていた。完全に地元西武と浦和レッズに偏った放送で、敵チームが点を取るとジングルが鳴らないばかりか、アナウンサーからはため息がもれた。それくらい、異彩を放っていた。それが何だか魅力的だった(なお余談だが先程の斉藤一美氏も何故かNACK5でスポーツ中継を時折行っており、それもまた魅力的だ)。

スポーツだけではない。FMの命、音楽番組も総じてレベルが高い。私が一番に残っているのは斉藤千夏さんの「ミュージックブルーパー」と「ハートビートナイト」だ。

千夏さんの静かだけど温かい語りと選曲は、本当の意味で純粋だったと思う。私が生涯で一番好きな歌「明日が輝く場所で」を教えてくれたのも、彼女だった。番組の最終回でもう一度かけてくれたことが、そんな些細なことが、とても元気付けてくれたのを覚えている。それはいつまでも、音楽の旋律と共に心に残っている。

日曜の大型カウントダウン番組「オールジャパントップ100」でのTAKA江川さんからは男の生き様を見せてもらった気がするし、平日18時からのリクエスト番組「ザヒットオペレーション」ではNHKFMでも聴いていた中村貴子さんが心から好きな音楽を紹介してくれた。現在土曜日にワイド番組「ヒッツ!ザタウン」を放送するバカボン鬼塚さんは止まらぬ笑いで、時折憂鬱な私に落ち込む暇を与えない。そして日曜深夜の「バーチャルアドベンチャー(現在はバーチャルアドベンチャーイースト)」は放送開始から聞き逃したことは一度しかない。この番組では坂本真綾さんという才能あるアーティストかつパーソナリティに出会った。

これらの放送局だけではない。ラジオは地域それぞれに、きっとこのような摩訶不思議な魅力をリスナーに与えている。運転しながら、勉強しながら、何かを「しながら」体験できるラジオは、ひょっとするとテレビ以上に受動的だ。しかし、どうだろう。私の体験からすれば、テレビ以上に能動的で、アクティブで、魅力的だ。何故だろう。

その何故を追求したくて、私は大学の4年間をラジオサークル活動というリスナーとは反対の立場で体験してみた。そこで見たのは結局物創りの楽しさだったけど、ラジオ特有の魅力は「手創り」感覚だと思った。テレビと違って大それたことが出来ない半分、創り手の真心は詰め込まれている。音だけしか伝えられないという障壁が、創り手の気持ちを高めている。少人数だからこそ、一人一人の役割が重要になってくる。生きてくる。

私は、きっとそれが摩訶不思議な魔法の種明かしだと思う。今後ラジオ制作という職業を手にすることはないけれど、私は今でもラジオが好きだし、それは人を好きになるように、一生ラジオが好きなんじゃないかと思う。

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